感情を予測する力と問題解決力のためのシステムズトレーニング(STEPPS)の研究参加に関するご案内
研究代表者 東京経済大学 寺島 瞳
研究分担者 日本女子大学 川崎 直樹
大変お手数ですが,以下の説明文書をすべて読んでから,一番下の同意書画 面へのボタンをクリックしてください。
1.STEPPSとは
誰にでも感情がうまくコントロールできないことはあるものですが、その浮き沈みが激しく、不安定な状態になることがあります。「他の人ならこんなに不安にならないだろう、泣いたり怒ったりしないだろう」とわかっていながらも、自分では感情がコントロールできず、人間関係や日々の生活で、悩みを多く抱えることがあります。
あなたには以下の図のようなことはありませんか?大学生の歳にあたる思春期・青年期は、このような感情の浮き沈みが一時的に激しくなることがあるといわれていますので、思い当たる節がある方も心配ありません。人によっては、成長に伴って気分が落ち着くこともあります。

STEPPS(ステップス)とはSystems Training for Emotional Predictability and Problem Solvingの頭文字をとっており、感情が激しくなることを予測し、柔軟な考え方や対処行動をとって、自分で感情をコントロールできるようになることを目的としたプログラムです。上記のような感情の浮き沈みに困っている方のために有効であるとされており、認知行動療法(人の思考および行動パターンを理解し、思考や行動、感情が変化するようにアプローチするカウンセリングの一技法)というカウンセリングの理論を背景に構成されています。
STEPPSは、他の治療法に比べてコストがかからずに、比較的簡単に実施することができるため、近年注目されています。通常は医療現場等で行われている治療法の一種であることを、ご承知おきください。海外では、感情の浮き沈みに困っている方への有効性が示されたプログラムの一つです。「他の人ならこんなに不安にならないだろう、泣いたり怒ったりしないだろう」とわかっていながらも、自分では感情がコントロールできず、人間関係や日々の生活で悩むことが多いとしたら、このプログラムを受けることが役に立つかもしれません。
具体的には、少人数のグループ・プログラムに参加し、グループメンバーと一緒に感情をコントロールするための様々なスキルを学んでいく内容となっています。学んだことを日々の生活で定着させるために、ホームワークにも取り組みます。
*STEPPSは、もともとは境界性パーソナリティ障害(対人関係、自己像、感情などの不安定さや著しい衝動性が特徴的なパーソナリティの障害)の患者さんのために開発された治療法ですが、境界性パーソナリティ障害の患者さんに限らず、感情の浮き沈みに困っている方への有効性が示されたプログラムの一つです。研究対象者になったとしても、境界性パーソナリティ障害であることを意味するわけではありません。
2.STEPPSの概要
感情が激しくて飲み込まれそうなときは、STEPPSでは例えばダムの水門が壊れた状態に例えられます。水門が壊れていれば、感情は激しく流れ出して止まりません。その状況から抜け出すためには、水門を直して流れる水量をうまく調整する必要があります。
水門を調整する、つまり激しい感情に飲み込まれないようにするためには、その体験を言葉にして他者と共有すること、その体験から距離をとること、感情の嵐が過ぎ去るまで気晴らしをして乗り越えること、問題に向き合うこと、などが有効です。
STEPPSは1回2時間、週に1回、全20回のプログラムで、3名~10名程度の参加者および2名のカウンセラー(STEPPSのトレーニングを受けた公認心理師/臨床心理士)とともに、これらの具体的な方法について一緒に話し合い、学んでいきます。授業のような雰囲気です。グループのメンバーに話して、同じつらさを共有して、その場に受け入れてもらうだけでも、気持ちが落ち着くことがあります。
各セッションの詳細については、以下のページをご参照ください。
3.研究について
1)本研究の目的
私たちの研究グループでは、原著者の許可を得て、STEPPSの日本語版を作成して、日本の大学生にも効果があるかどうか研究しています。現在までに26名の大学生にSTEPPSを実施して、その実施可能性や有効性を示してきました。STEPPSの実施前後で、考え方や感じ方が変化したり、ポジティブな感情が増えたりなどの良い効果がみられています。参加した方からは「毎日が楽しく感じられるようになった」「生きやすくなった」「以前より自分の気持ちに向き合うことが嫌ではなくなった」などの感想が得られています。よって、これまでの研究で、感情調整の困難さを抱えた日本の学生に対しても、STEPPSが実施可能であり、有効であることが示されました。
そこで本研究では、感情調整に困難を抱えた大学生を対象に、ランダム化比較試験というより厳密に効果を検証する研究手法を用いて、STEPPSのさらなる有効性を示すことを目的としています。
2)本研究の実施方法
①STEPPSへの参加要件
・対人関係、自己像、感情などの不安定さや著しい衝動性にお困りの方(実施するアンケート調査の該当尺度で一定以上の点数であること)
・東京経済大学の大学生・大学院生の方
・STEPPSグループ療法(以下プログラムと呼ぶことがある)参加が可能である方
・プログラム参加の場合、保護者から参加同意書(プログラム参加者用)を得た方
・プログラム参加の場合、主治医やカウンセラーがいる場合は,主治医やカウンセラーから参加承諾を得た方
⇒これらに該当しない方は、全参加者用同意と初回のアンケート回答のみで、研究参加は終了となります。
②STEPPSへ参加できない場合
・緊急に治療を要する精神症状(重篤なうつ状態、幻覚・妄想など)でお困りの方
・3か月以内に死にたい気持ちが急激に高まったことがある方
⇒ 以上の症状が一つでも当てはまる方は、グループ参加は見送り、学生相談室等の適切な機関を紹介します。
・プログラムの3割以上参加できないことが、すでに分かっている方
③研究の流れ
参加に同意(全参加者用同意書を提出)いただいた後、STEPPSの参加要件に該当するか判断するために、アンケート調査を実施します。その結果を受け、要件に当てはまらない場合、もしくは上述の参加できない場合にあてはまった方は、1,000円相当の謝礼品(図書カード)を受け取り、研究参加は終了となります。
研究対象者となった場合は、STEPPSグループ療法に参加するグループ(STEPPS群)と半年間お待ちいただくグループ(待機群)のどちらかに振り分けられます。どちらのグループになるかは、コンピューターを用いてランダムに決められるため、選ぶことはできません。
待機群になった場合は半年間お待ちいただいた後に、ご希望がある場合は、次のSTEPPS実施の際にプログラムを受けていただくことができます。待機群のSTEPPSは全回ZOOMの実施となりますのでご了解いただければ幸いです。ただし、半年間待機後に、①の参加基準に該当しなくなったか、もしくは②の除外基準に該当した場合は、STEPPSへの参加はご遠慮いただきます。
④実施するアンケート調査について
プログラム参加に同意(プログラム参加者用同意書を提出)いただいた後、まずはウェブ上でアンケート調査にご回答頂きます。アンケート調査には、感情調節力、抑うつ症状などの各指標の評価、主治医やカウンセラーの有無、緊急に治療を要する精神症状の存在、3ヶ月以内の自殺企図の確認といった項目が含まれます。
介入前、介入中、介入後(セッション終了時)、治療終了から3か月後に、ウェブ上のアンケート調査に回答します。最初の評価に加えて、衝動性、パーソナリティ特性などのプログラムの効果を検討するための各指標の評価も含まれます。
これらのアンケート調査に回答(全体の9割以上の回答が条件)するごとに、1回1,000円相当の 謝礼品(図書カード)をお渡しする予定です。





4.生じる可能性のあるリスク/不利益および利益
1)生じる可能性のあるリスク/不利益
①全参加者に生じる可能性のあるリスク/不利益
研究対象者になって、STEPPS群に割り振られた場合は、毎週1回、2時間、20回の時間的負担が生じます。それ以外に、毎回ホームワークが出ますので、プログラム外の日常生活の中で、ホームワークを行う時間がかかります。
介入前、介入中、介入後、3か月後のアンケート調査(20分程度)に回答いただくことに対する時間的負担が生じますので、あらかじめご了承ください。
ただし、後述のように、時間的負担が大きくなった場合は、いつでも研究参加の中止は可能ですので、ご安心ください。
②プログラム参加者に生じる可能性のあるリスク/不利益
プログラム実施中の好ましくない、意図しないあらゆる兆候、症状、または疾病のことを有害事象といい、必ずしもプログラムとの因果関係は問いません。例えば、落ち込みや不安の悪化、不眠、動悸、食欲の増加・低下、倦怠感、自殺未遂などです。国内外のSTEPPS実施においては、有害事象の発生はこれまで確認されておりません。
また、STEPPSを構成する認知行動療法についても、有害事象の頻度は薬物等の介入に比べて非常に低いことが明らかとなっております(岡本他、2015)。しかし、日本医療制作機構(HGPI)(2021)の報告書では、認知行動療法の実施過程の10回目時点で、10.4%に以下の有害事象が認められました。具体的には、気分の変化(不安、焦燥感など)、行動の変化(回避行動、セッションのキャンセル、仕事を休む、外出を避ける、過量服薬など),身体の変化(早期覚醒、倦怠感、声が出づらくなるなど)、認知機能の低下(集中力の低下など)です。
さらに、岡本他(2015)でも、認知行動療法のセッション内で、理解してもらえていないという不信感や、問題に直面することによって抑うつや不安が高まるなどの有害事象が生じる可能性も指摘されてはおりますが、これらは治療者が適正に認知行動療法を行っていないためであるとされています。
STEPPSでは、これまで有害事象は確認されてはおりませんが、認知行動療法の一種であるため、このような有害事象の発生の可能性は全くないとは言い切れません。この点を十分にご理解いただき、研究に参加するか否かをご判断ください。
③プログラム参加者に生じる可能性のあるリスク/不利益への対策
生じる可能性のあるリスク/不利益に備えて、本研究では以下の対策を講じます。
a)プログラムの適正実施
本研究の2名のカウンセラーはSTEPPSの研修を受講済みであり、日本の大学生に対する実施経験があります。さらに、セッションが適正に実施されているかについて、カウンセラーがお互いにSTEPPS独自の治療評価尺度を用いて確認します。STEPPSの開発者(Nancee Blum)によるスーパーバイズ(STEPPS実施上の指導)も定期的に実施することで、STEPPSが適正に行われているかどうか確認しながら行って参ります。
b)重篤な有害事象の防止
毎回、自殺の危険性などについては、セッション内の最初に実施するアンケート調査で確認していきます。万が一、緊急に治療を要する精神症状(重度のうつ状態、幻覚・妄想など)や、自殺・他害の恐れなど、重篤な有害事象が発生した場合は、プログラム参加は中止し、すぐに学生相談室等の適切な機関を通じて、必要な医療機関へ紹介します。その他、上述の認知行動療法で確認された軽微な有害事象についても、もし発生した場合はいつでもプログラム内でご相談ください。
ただ、有害事象発生の背景には、さまざまな要因があり、必ずしも本研究との因果関係を確定することができません。よって、本研究にて、その場合の医療費や補償金などの補償や、有害事象の発生の責任を負うことができないことを、プログラム参加前にご承知おきいただけますと幸いです。
③プログラム内で話された個人情報への配慮
プログラム内で話される個人の体験は、「聞いただけで個人が特定できる」情報です。こういった情報を安心して話すことができる場であって、初めてSTEPPSは効果を持ちます。また、個人情報は外で他人に話すことで、他人に大きな損害を与えることがあります。よって、プログラム内で話された個人情報等はSTEPPSの活動以外には用いないこと、このグループの活動で知りえた個人情報を、第三者に提供しないことを、プログラム参加者には初回のセッションでお約束いただきます。
残念ながら、以下のようなことがあった場合、研究参加はご遠慮いただきます。
a)他の参加者の情報を,第三者に話した。
具体例:実名を出してはいないものの、参加者が話していた体験をグループ外で他者に伝えた。
(グループに参加していない)友人と共通の趣味を持っている参加者がおり、友人にその参加者を紹介した。
b)他の参加者が語った体験を、友人や家族に話した。
具体例:他の参加者が友人の彼女(彼氏)であり、その人が話していた内容を友人に伝えた。
c)STEPPSの感想についてTwitterでつぶやいた、などSNSに投稿した(アカウントを保護していても違反となります)。
d)グループの様子を写真に撮り、SNSにアップした(合意があったとしても控えて下さい)。
悪質な場合は、ハラスメントを取り扱う学内の委員会への報告も含めて、法的責任が問われる可能性があることを、ご承知おきください。
2)予想される利益
①アンケート調査のフィードバック
各アンケートの回答結果は簡単にフィードバックをしますので、自己理解に役立ちます。
②アンケート調査の謝礼およびマニュアル
アンケート調査(20分程度)に、全体の9割以上回答するごとに、1,000円相当の謝礼品(図書カード)をお渡しします。さらに、プログラム参加者には、9,000円相当のSTEPPSのワークブックが無料で配付されます。
③プログラム参加の効果
研究対象者になった場合は、海外では、多くの研究で有効性が明らかとなっているプログラムを費用の負担なく受けられます。また、これまで日本の大学生でも、STEPPSに参加することで、感情調整や対人関係の問題、うつ症状、ネガティブな感情などの改善などに対して、統計的に有意な効果が見られています(藤里他、2019)。本研究でも、プログラムに参加することで、同様の効果があることが期待されます。
5.研究参加の中止および同意の撤回について
①研究参加を中止する場合
ご本人から研究参加の辞退の申し出や、同意の撤回があった場合は、いつでも研究参加を中止することができます。もしくは、上述の個人情報への配慮に違反した場合などは、プログラム参加の中止を、研究代表者からお願いする場合もあります。
さらに、プログラム参加中に重篤な有害事象が発生した、もしくは発生が見込まれることがわかった場合は、参加を中止して、適切な学生相談室等の適切な機関を紹介します。
ただし、研究全体ではなく、プログラム参加のみの中止を希望した場合は、その後のアンケート調査の回答は依頼する場合がありますが、アンケート調査に同意するか否かも、参加者の自由意思となります。
②研究参加後の同意撤回について
研究の参加について一度同意した後であっても、不利益を受けずに同意を撤回することができます。同意を撤回したとしても、授業評価など学生生活上の不利益を被ることは一切ありません。ただし、研究成果が論文や書籍等に公開された後は、その情報の削除等に係る同意撤回のご希望を受けることができないため、あらかじめご了承ください。後述のように、個人情報が特定される情報は公開いたしませんので、ご安心ください。
6.個人情報等の取扱いについて
提供された研究に関するアンケート調査などによるデータは、個人情報を除いたID番号で匿名化して管理されます。また、研究に関連するすべての関係者には秘密を守る義務を課されていますので、個人情報が悪用されたりすることは決してありません。
研究のデータは個人情報と紐づかない形で、パスワードなどを用いて、厳重に管理・保存されます。また、研究論文発表後から5年経過後に、個人情報が記載されていないことを確認して廃棄します。
ただし、研究期間中に、あなたやあなたの周囲の人の安全性を確保するのに重大な情報を得た場合、ご承諾が得られなくても大学や保護者、主治医に報告することがあります。安全を守るための対応となりますので、あらかじめご了承ください。
7.研究に関する情報公開について
研究の概要は、公開のデータベースに登録します。進み具合に応じて登録内容は更新されます。また、本研究の成果は、個人情報が特定されない形で、学会発表や論文などで発表されます。
8.倫理委員会について
本研究は東京経済大学研究倫理委員会の承認を経て、プログラム参加者の皆様に不利益がないよう万全の注意を払って行われています。
9.研究の資金源
本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(C)「境界性パーソナリティ障害に対する認知行動的グループ療法の効果研究(主任研究者:寺島瞳、研究課題番号:19K03346)」の助成を受けて実施されます。その他、研究の信頼性に影響を与えうるような利害関係を有する企業、団体からの資金は受けておりません。
10.本研究に関するご相談等の問い合わせ先
研究の内容に関してご意見ご質問などございましたら、気軽に研究代表者にお尋ね下さい。
なお、個人情報保護などの理由により、対応・回答ができない場合もありますので、あらかじめご了承ください。
研究代表者 東京経済大学全学共通教育センター 准教授 寺島 瞳(てらしま ひとみ)
TEL:042-328-9217 e-mail: stepps@hotmail.com
本研究に関して倫理的な問題等ございましたら,東京経済大学人研究倫理委員会までご相談下さい。
東京経済大学 研究倫理委員会担当(研究課)
TEL:042-328-7959 e-mail:kenkyu@s.tku.ac.jp
11. 引用文献
・藤里紘子・山田圭介・大久保智紗・宮前光宏・伊里綾子・寺島瞳(2019). 感情調整が困難な学生に対する感情予測と問題解決のためのシステムズトレーニングの実施可能性と有効性. 認知療法研究, 12, 46-57
・岡本泰昌・神人蘭・吉野敦雄・菊地俊暁・中野有美・堀越勝・大野裕 (2015). 認知行動療法の有害事象と実践に際しての留意点 精神神経学雑誌, 117, 445-451.
・特定非営利活動法人 日本医療政策機構(HGPI) (2021). 認知行動療法及び認知行動療法の考え方に基づいた支援方法に係る実態把握及び今後の普及と体制整備に資する資料 厚生労働省令和2年度(2020年度)障害者総合福祉推進事業報告書



